つまようじの尖っている方の反対側、ここではつまようじの頭と呼ぶことにしましょう。
つまようじの頭には溝が彫られているのは皆さん見たことがあると思います。この溝はなんのためにあるのでしょうか?
「つまようじの頭の溝を折るって取り外すと、箸置きのようなつまようじ置きになる」という話があります。けっこう有名な話ですが、実際にはあの溝はただの飾りというのが正しいようですね。
つまようじの頭の溝は業界では「こけし」と呼ばれていて、メーカーにより形の違いがあるものの、ほぼすべてのつまようじについているそうです。
つまようじの頭に装飾をつけるようになった理由については諸説ありますが、有力な説として紹介されるのは次のようなものです。
つまようじの材料である細い棒を切断するときに、切断面が黒く焦げて見た目が悪くなってしまいます。清潔感が重要なつまようじでは、これが不潔に見えて問題だということで、こけしをモチーフにした装飾をしたところ印象がよくなったというのです。さらにつまようじは回転させながら先を細く削って作るため、溝を彫るだけの装飾であれば同時に作ることができて都合が良かったのです。
では、「つまようじの頭の溝を折ると、つまようじ置きになる」という話はどこから出たのでしょうか?
誰が言いだした話なのかは不明ですが、明治から大正・昭和にかけて活躍した落語家・初代 柳家金語楼(やなぎや きんごろう)が、「つまようじの頭の溝を折ると、つまようじ置きになる」というアイデアを思いつき実用新案登録をしたという伝説があるのです。
柳家金語楼といえば、自分の名前はおろか顔まで商標登録していたとか、発明家として活躍し大儲けしたなどの伝説をもつ人物で、そうした話のひとつとしておもしろおかしく広まったのではないかと思われます。
また、この実用新案登録のエピソードは柳家のほか、ある経済評論家の先生が思いついたなど、いくつかバリエーションがあるようですね。