トガリネズミという名前の生き物がいます。名前はネズミとつきますが、ネズミよりもモグラなどに近い種類の哺乳類です。
トガリネズミは170ほどの種類が確認されていますが、日本でも生息しているトウキョウトガリネズミなどは哺乳類のなかでも最も小さい哺乳類のひとつとされています。しっぽの長さを抜くとせいぜい2センチ程度、体重は2グラム以下といいますから1円玉2枚分より軽いんですね。
こんなに小さいトガリネズミの最大の特徴はとにかくたくさん食べることです。短時間に寝て食べてを繰り返し、とにかく常にエサを探して食べ続けます。トウキョウトガリネズミの場合は30分くらいのサイクルで寝て食べてを繰り返しているそうです。
エサは主に昆虫やミミズなどを食べます。体は小さいものの常に食べ続けて、1日に自分の体重の3〜4倍も食べるということですから、体格の割に相当な大食いですね。
トガリネズミが食べ続ける理由は体の大きさにあります。
トガリネズミは恒温動物です。つまり人間と同じで、体の中で熱を作り出し体温を一定に保っているんですね。この体温を一定に保つ働きは体が小さいほどエネルギー効率が悪くなるんです。
体長が1/2になった場合で考えてみましょう。体重(体積)は長さの3乗に比例します。なので体重は1/8になります。それに対して体の表面積は長さの2乗に比例します。なので表面積は1/4になります。
ここから考えると、体長が1/2になると、エサを食べて熱を生み出す力は1/8になるのに、体から逃げる熱の量は1/4にしかならないということです。つまり体長が半分になると2倍頑張って熱を生み出さないといけないわけです。
もちろんこれは机上の計算であって、実際にはここまで効率は落ちませんが、いずれにしても常に熱を生み出さないと体温を保てないわけです。そのために常に食べ続ける必要があるんですね。中にはエサを食べないと3時間くらいで餓死してしまうなんて話もあるようです。
ちなみにこの記事で紹介したトウキョウトガリネズミですが、トウキョウと名前がつくものの実際には日本では北海道にしかいません。トウキョウという名前は、明治時代に発見した研究者が、「Yezo(蝦夷:現在の北海道)」と書くところを「Yedo(江戸)」と間違えたことに由来するそうです。