妊娠は病気ではないといいますが、まぁ、大変なものです。ときにはママと赤ちゃんの安全のために、子宮切開によって胎児を取り出す「帝王切開」が行われることもあります。本当に命がけですね。
ところで帝王切開ってなんだかよくわからない言葉ですね。出産に関する用語なのになぜ帝王なのでしょうか?
帝王切開は古代ローマの帝王「ガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)」に由来するという説があります。「賽は投げられた」や「ブルータス、お前もか」などの言葉でも有名なあのカエサルですね。
たまに聞くのは、カエサルが産まれるときに帝王切開で産まれたからという説です。
ただ、カエサルが産まれたのは紀元前100年のこと。当時の医術で子宮を切り開いて母親が無事にすむということは考えにくいですね。実際、妊娠している女性が亡くなった場合に胎児を取り出すために切開するケースはあったようですが、カエサルの母親はカエサルが産まれてからも生きているので、カエサルが帝王切開で産まれたということはないでしょう。
しかし、カエサルがまったく関係ないかというとそんなことはありません。ポイントはカエサルという名前です。
カエサル(caesar)はもともと「切る、分ける」といった意味の言葉です。そのためラテン語の「sectio caesarea」やドイツ語の「Kaiserschnitt」(いずれも帝王切開の意味)の言葉の元になっています。
ガイウス・ユリウス・カエサルのカエサルは、ユリウス氏族の分家であることからついたと言われています。つまり切り分けるという意味ですね。
カエサルにちなみ、今ではcaesarやkaiserは切るというよりも、帝王という意味で使われることが多くなっています。
つまり、カエサルと帝王切開には直接的なつながりはないものの、言葉が混同されて、帝王切開という言葉が生まれたわけですね。