「イワシの頭も信心から」というと、つまらないものでも信じる気持ちがあれば有り難いものに見えてくるという意味のことわざですね。
イワシは昔から漁獲量が多く、よくいえば日本人に馴染み深い、悪くいえばありきたりな魚でした。そこでタイなどのように高級なお祝いの席に食べられる魚と比べて卑しい魚とされてきました。
つまり、イワシの頭は有り難みのないつまらないものの例えです。
しかし、これは別に食べ残しのゴミを拝むという話ではないのです。イワシの頭は、実は魔除けにはメジャーなおまじないです。
節分にイワシの頭を焼いてヒイラギの枝にさし、それを戸口に挿しておくという風習があります。これを「柊鰯(ひいらぎいわし)」や「ヤイカガシ」と呼び、魔除け、厄除けの意味があります。鬼がヒイラギのトゲで目をさし、イワシの悪臭を嫌がるとされ、各地で行われていたそうです。
平安時代には正月のしめ縄に「なよし(ボラ)」の頭とヒイラギを飾っていたという記録があり、これが変化したとも考えられています。
ちなみに、つまらない魚の代表のように扱われるイワシですが、正月のお祝いの料理に「にらみイワシ」、「すわりイワシ」といってイワシを一尾つける風習もあります。最近ではイワシは栄養価が高く、ヘルシーな食品で、健康効果が注目されているそうです。